暖簾に使用される生地には、綿・麻といった天然素材からテトロンや
ポリエステルといった化学繊維に至るまで、さまざまな種類があります。
それらは用途や費用、染色の手法などによって使い分けられますが、
中でも比較的ポピュラーで需要が多いのが天竺木綿です。
この生地は綿織物の一種で、20番手程度の糸を使用して平織りで織られています。
この「番手」とは糸の太さを表す用語で、24番手ぐらいの糸で織られたものは
「細布」、30番手ぐらいの糸で織られたものは「金巾」といいます。
特徴はというと、比較的厚手で扱いやすいという点が挙げられます。
この生地を使った繊維製品としては、シーツやTシャツなどがおなじみです。
足袋の裏地などにも使われていることから分かる通り、耐久性もかなりあります。
価格も他の天然素材の生地に比べると安い方なので、たとえば本染めの
オリジナル暖簾をリーズナブルな費用で作りたい場合などに適しています。
風合いもシンプルで、長く使い続けても飽きがこないのが利点です。
ちなみに「天竺」とは、昔の中国におけるインドの呼び名です。
といっても現代の国土とぴったり同じ地域を指していたわけではなく、
自分たちの国より西側の地域を幅広くカバーする呼び名であったと
言われていますが、ともあれ明治維新前後にインドから輸入された
綿製品にこの生地が用いられていたことから、このように名付けられました。
「Tクロス」という別称もありますが、これは輸入品の商標に「T」の
字の商標が使われていたためです。