印染めは伝統的な染色技法の一つであり、古来から日本各地で行われてきました。素朴でありながら温かみも併せ持ち、親しみのある懐かしさを感じさせる伝統工芸法です。化繊よりも天然素材との相性が良く、
手ぬぐいや旗などでもよく使われてきた工法になります。現在はこうした手作りの染物が注目されているのです。

印染め

のれんは漢字で暖簾と書き、主な用途としては日除けや視線避けなど、
住宅で言えばカーテンのような役割をする布になります。装飾的な意味合いもあり神社では魔除けに使われたり、のぼり旗や商店の軒先などに飾られて、屋号やお店のアピールの役割にも親しまれてきました。また風呂敷やハッピなど、日本古来からの伝統的な日用品でもこの染色方法は良く使われております。

のれんは地の色合いに蝋などで蓋をして、白地を見せる染め方があるのです。プラスしてゆく方法ではなく、マイナスして行く考えであり、逆にデザインが浮き上がって見えるような効果を持っております。

赤い布地に白い文様やそのお店の商売を表すアイコンなど、蝋で封をして染まらないようにすることで白く浮き上がらせるのです。これが日本に古くから伝えられている暖簾の印染めになります。

陰と陽のデザインが染物です

影絵というのは光と影を使った芸術であり、現在のTVなどの動画メディアの原形的な存在です。紙や木で作られた人形に後方から光を当てて、その光と影の陰影をスクリーンに照射することでシルエットを作ります。スクリーンの色や素材を工夫したり、光の角度やセロファンなどを使えば多彩な表現が可能です。

紀元前から影絵は庶民の間で親しまれて、現在も文化として健在になります。天然素材のれん日本の染物もこの影絵の考えに近く、陰と陽で柄をデザインすることで反物にしてきた歴史があるのです。

白い布に染める部分と染めない部分を作れば、自然と2色のコントラストを生むことが可能になります。紺地に白い丸い模様を浮かび上がらせれば雪景色になりますし、それがススキの穂であったり小紋柄や格子柄であったりと、染める部分だけではなく染めない部分も考えながら、テキスタイルは生み出されてきた歴史があるのです。

暖簾などの印染めもまさしくそうした伝統的な染色技術であり、屋号店名などを抜き型で作り看板にしました。暖簾の構造は上部に棒を通すスリットを設け、下は風切りのある布で作られております。風によって揺れることもデザインや風情になり、行灯で照らされた白い抜き地部分が夜景にも映えるのです。